実るほど頭を垂れる稲野かな

災害時のツイッター活用の提案

災害時、建設会社が現場状況をツイート

 災害発生時、真っ先に現場に急行するのは、施設の管理者や地域の建設会社です。(火災を除きます。)

 

 災害現場に急行した者が、現場の状況をツイートすることで、その情報が広く、迅速に伝わります。

 

 実際に、一般社団法人群馬県建設業協会(以下、「群建協」)が実施している事例を紹介します。

 

 

1.群馬県建設業協会の取り組み

 群建協は、群馬県内の建設会社によって構成される団体です。

 群建協では、従来から災害時に関係機関と情報共有するととも、協会ホームページに災害情報を掲載していました。そして、近年のSNSの普及等の社会変革を踏まえ、2014年より災害情報をツイートする取り組みを実施しています。また冬期間は除雪の実施状況や路面状況をツイートしています。

 ツイッターのアカウントは、@gunken000 です。

 ちなみに、ツイッター投稿システムの愛称は「ぐんケン見張るくん」です。

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2.ツイートの例

 (1)みなかみ町で国道の土砂崩れ(2015年7月)

 みなかみ町の国道で土砂崩れが発生した際、群建協の会員会社が現場へ急行し、復旧工事を実施しました。その様子を逐一ツイートしています。地元紙にも好意的に取り上げられています。

 

●ネットのニュースの第一報

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●群建協のツイート

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#みなかみ町災害 until:2015-07-22 - Twitter Search

 

●地元紙の記事

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(2)北関東豪雨(2015年9月)

 茨城県内で鬼怒川決壊などの被害が出た北関東豪雨の際、群馬県内でも被害が発生しました。下記は、桐生市内で発生した法面崩落の現場のツイートです。

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#桐生市災害 until:2015-09-12 - Twitter Search

 

  群建協の災害時のツイートには、ジオタグ(緯度経度の位置情報)が付与されています。このジオタグを活用して、地図上に展開表示することができます。下の図は、桐生市の災害現場のツイートを「ちずツイ」を使って表示したものです。

 このように表示することで、どこが、どんな状況なのか、といった状況把握に役立つと思います。

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(3)台風21号(2017年10月)

 台風により、倒木や小規模崩落などの被害が群馬県内各地で発生しました。その状況を逐一ツイートしています。

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(4)除雪対応

 群建協では、除雪作業の状況についても、逐一ツイートしています。

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 from:@gunken000 #路面状況 - Twitter Search

 

 下図のように「ちずツイ」で表示すると、除雪作業が広域に渡って行われている状況が把握できます。表示エリアを絞り込むことで、特定箇所の状況を知ることができ、車で外出する際の参考情報として役に立つと思います。

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3.考察

(1)災害時の情報源として有効

 災害時、迅速・詳細に現場の状況を知るための情報源として、群建協のツイートは大いに役立つものと考えられます。

 特に、ジオタグが付与されていることから、下記のメリットがあります。

  • ピンポイントで位置の特定が可能
  • 自分の知りたい場所の情報に絞り込むことが容易
  • 複数のツイートをPC画面の地図上に展開・表示し、俯瞰的な状況把握が容易(ちずツイなどを活用】

 

(2)市町村には無理

 災害時の現場の情報は、建設会社ではなく、市町村などが情報発信すべき、と考える人もいると思います。

 しかし、市町村には無理だと思います。ほとんどの市町村は、災害パトロール等の体制が不十分で、自ら現地の状況を迅速に把握することはできません。

 また、建設会社や住民が市町村に現場の情報を伝えても、その情報をもとに迅速・的確に住民向けに情報発信することは、市町村にはできないと思います。

 過去の災害において、市町村役場の庁舎の被災などにより、結果として発災直後に的確に機能しなかった事例が複数あります。内閣府策定の「市町村のための水害対応の手引き」の中でも、水害時に市町村が機能しなかった事例が具体的に示されています。

 

(3)広報としての効果

 地域の建設会社は、公共工事や建築工事などの他に、災害対応や除雪等を実施しています。地域の生活・産業を支える上で不可欠な存在ですが、その活動内容が、一般住民に十分に知られていないと思います。

  建設会社が広報するとすれば、

「◯◯建設は、皆様の生活を守るため、災害対応に日夜努力しています。」

といったメッセージ公告を新聞に掲載するなど考えられますが、効果は小さいと思います。大手ゼネコンがコマーシャルをテレビに流しているケースもありますが、中小規模の建設会社では、予算的に到底無理です。

 しかし、時代が変革し、若者を中心に多くの人が、スマホソーシャルメディアを自由自在に活用して、いつでもどこでも情報を発信・収集する時代となりました。そのトレンドは加速すると思います。

 そうした時代の変革を踏まえると、地域の建設会社が災害現場で尽力しているナマの姿をリアルに伝え続ける、そうしたことを継続することにより、地域に不可欠な存在であることを多くの人に理解してもらう、そうした広報を進めるべきと思います。

 従来の広報媒体はマスメディアがメインでしたが、これからはソーシャルメディアが主役になると思います。特に、地域に密着して地域のために活動している建設会社こそ、地域住民向けにソーシャルメディアで広報すべきと思います。

 

(4)モチベーション向上

 一般論として、感謝されると、モチベーションが上がります。

 群建協のツイートに対しては、ツイッターのリプライ機能により、住民から感謝・ねぎらいのメッセージが、少数ですが送られています。これらのメッセージを、現場で従事している者に届けることにより、現場のモチベーションが上がると期待されます。

 

 夜中に大雪が降った翌朝、道路がキレイに除雪されていたとします。住民として、除雪した者へ感謝の気持ちを伝えたくとも、従来はその手段が無かったものが、ツイッターを利用することで、気軽に伝えることができます。そして感謝の気持ちを伝えられた者だけでなく、伝えた者にもプラスの効果があると、心理学的に言われています。 

ポジティブ心理学 「ありがとう」が仕事や勉強に与える嬉しい効果 | コラム

 

  ここで紹介した群建協のツイッター活用のように、

  • 災害等の現場で頑張っているナマの姿をリアルに伝える。
  • 住民から感謝のメッセージが届けられる。

 このようなコミュニケーションが活発になることは、サービスをする側・受ける側の双方に、プラスの効果を与えることになります。