実るほど頭を垂れる稲野かな

災害時のツイッター活用の提案

災害情報の信頼性と迅速性、大事なのはどっち?

台風、大雨、地震など災害が発生した際、状況を把握するための情報が必要となります。

これは、関係機関だけでなく、被災地に自分自身や家族・知人等が居る場合にも、災害情報が必要となります。

 

実態として、気象庁からは雨量、風速、震度の規模、津波の有無などが迅速に発表され、テレビやネットを通じて情報を得ることができます。

しかし、実際に現場はどうなってるんだ?被害状況は?といった情報については、なかなか得ることができません。

 

そのような被害状況などの災害情報のあり方について、考察します。
 

 

1.災害直後に必要な情報の要件

 災害の発生直後、的確に行動するためには、周囲の状況に関する情報が必要です。その情報に求められる要件には、以下の項目があると思います。

  • 情報の迅速性 (できるだけ早く情報が必要)
  • 情報の量 (できるだけ多くの情報が必要)
  • 情報の信頼性 (信頼性が高い情報が必要)

 

 

2.災害時のツイッター情報
 これまで紹介した災害時のツイッター活用
 簡単に言えば「災害時に、#◯◯市災害 と位置の情報をつけて、現地の状況をツイートして下さい。」と広くお願いする方法について考察します。

 

 情報の迅速性は極めて高いです。災害発生時、現地にいる人が現地の状況をツイートするだけなので、発災直後から情報が得られます。

 情報のについては、ツイッター活用方法の浸透の程度によると思います。防災訓練を繰り返す等により、住民への浸透が進めば、多くの住民からの投稿=多くの情報が期待できるようになります。
 情報の信頼性は、極めて低いです。『誰でも、匿名でも良いから、現地の状況をツイートして下さい。』としていることから、情報の信頼性が低いことになります。

 

 以上を整理すると、災害時のツイッター情報については、

  • 情報の迅速性は、極めて高い
  • 情報の量は、住民への浸透状況次第で、多くの情報が期待できる。
  • 情報の信頼性は、極めて低い

と評価できます。

 

 

3.事例の考察

 これまでの和光市をはじめとするツイッター活用の防災訓練や大雨の事例では、迅速に状況把握に役立つツイートが投稿されました。一部の訓練で少数のイタズラ投稿が見られましたが、いずれも無視すれば済む程度の状況でした。

 投稿者について匿名可とすることで情報の信頼性は低くなりますが、その情報源が使えるか、使えないかは、別問題だと思います。
 また、情報の信頼性は低くとも、信頼性を評価しながら使うことが可能です。具体的な信頼性を評価する方法としては、下記が考えられます。

  • 投稿者のプロフィールと投稿履歴から評価*1
  • 他者の投稿情報と比較して評価*2

 

4.角を矯めて牛を殺す

 災害時のツイッター活用は、情報の信頼性には目をつぶり、情報の迅速性と情報の量を重視した方法です。そして、集まった情報について、各自で信頼性を評価しながら活用するものです。

 これを批判する意見もあります。

  • 一般の目に触れる災害情報は、事前に信頼性が高い情報に限定すべきである。
  • 匿名投稿の中には、ウソ・デマが混入している可能性がある。

 しかし、投稿者の事前登録などを行い、匿名不可、住所・氏名・年齢・職業等の登録など情報提供の敷居を高くすることは、投稿者の減少=情報の量が損なわれることになると思います。すなわち「角を矯めて牛を殺す。」ことになると思います。

 

 

5.トレード・オフ

 災害情報の信頼性を重視すると、迅速性がどうなるかを想定してみます。

  • 災害時、市役所に住民から被災状況に関する情報が寄せらました。
  • 市役所が、その情報を国や県への報告等に活用する前に、本当かどうか、情報の信頼性を確認する必要があります。
  • このため、市役所から職員等が現地へ行き、状況を確認した後で情報を活用することになり、情報活用までのタイムラグが発生し、情報の迅速性が低下します。
  • 現地へ行く人員・体制の不足や交通マヒで現地に行けない、といった状況になると、寄せられた情報は未確認情報=信頼性が確保されない情報となり、活用されない情報になります。

 

 このように信頼性を重視すると、情報活用の迅速性が低下し、未確認情報は活用されない状態となるケースも生じ、その結果、活用できる情報の量も少なくなる、と想定されます。

  

 すなわち、災害時の情報について、情報の信頼性を重視すれば、情報の迅速性+量が低下する、といったトレード・オフの関係があると思います。

 

  

6.さいごに

 前述のように、「情報の信頼性」と「情報の迅速性+量」の間にトレード・オフの関係があるとすれば、災害情報の収集・共有の仕組みづくりにおいて、2つのアプローチがあると思います。

  • 迅速に多くの情報を集めた後、情報の信頼性を評価しながら活用する。
  • 信頼できる情報を集めるシステムを構築し、その迅速性を高め、情報量を増やす方策を講じる。

 

  ツイッターという既存サービスを活用することで、前者は簡単に導入できるものと思います。

*1:ツイッターには投稿者のプロフィールを閲覧できる機能があります。また投稿者の過去投稿も簡単に閲覧でき、信頼性評価の参考に使えると思います。例えば、過去の防災訓練に参加している者は、大いに信頼できる。取得直後のアカウントやふざけた投稿ばかりしている者は信頼できない、など

*2:特定エリアの状況を伝えるツイートが複数者から投稿され、複数者が同様の内容を伝えているのであれば、その内容は信頼できると評価できます。一人だけ目立つ内容で投稿しているケースは、疑うべきです。

*3:被災地の中でジオタグを添付し、自分の居場所を明示してウソ・デマを投稿するケースは考えにくいと思います。ジオタグの偽装は、一般的には難しいです。