実るほど頭を垂れる稲野かな

災害時のツイッター活用の提案

台風10号接近中に消防団が現場からツイート

2020年9月上旬、大型の台風10号が九州に接近。その際中、宮崎県日向市の消防団は巡視中の現場状況を逐一ツイッターに投稿。(日向市消防団としての実名アカウント)

具体的なツイートは、こちら にまとめました。

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異常なしの情報から、道路冠水、河川の水位、倒木、通行止めなど、様々な情報がツイートされています。

この日向市消防団ツイッター活用について考察します。

 

市民の情報ニーズに合致

災害時のテレビのニュースは、大規模な被災現場や救助活動の実況など、派手な現場、言い換えると視聴率を取れる映像が主体になると個人的に感じます。

台風接近中の日向市民の心情を察すると、直接関係ない遠くの被災現場の情報よりも、自分の近辺が具体的に今どんな状況なのか?被害の有無は?といった情報へのニーズが高いと思います。消防団のツイートは、こうした市民の情報ニーズに合致した情報源になります。

 

迅速に伝わる

ツイッターは投稿した瞬間、誰でもその情報にアクセス可能となります。

一方、従来の一般的なやり方、すなわち、現場の消防団員から自治体の災害対策本部等に情報を伝達し、そこで情報を集約・整理してから...といった方法では、情報が市民に届くまでにタイムロスが発生します。写真などせっかくの詳細情報が公開情報から省略されたり、情報発信までに長時間を要するケースが多い、と個人的に感じます。

 

広く伝わる

日向市消防団が災害時にツイッターで情報発信するのは、今回の台風10号が、実災害への対応として、初回のことで、周知が不足していて日向市の市民にも十分に認知されていないと想定されます。しかし、今後PR・実績を重ねていけば、認知が進み、近い将来、

災害発生時、日向市民は、テレビよりも先に、手元のスマホから消防団のツイートを確認するのが当たり前

といった状況になると思います。

  

システムの信頼性・耐久性

ツイッターは膨大な利用者が日常的に利用しており、そのシステムの信頼性・耐久性は世界最高レベルとも言われています。さらに「天空の城ラピュタ」がテレビで放送されるたびに「バルス」による瞬間集中アクセスに対する耐久性が実証されています。

一方、行政機関のホームページは、災害時にアクセス集中で閲覧できなくなるケースがあります。また災害時にだけ使うアプリ・システムでは、災害時にバグが出たり、使い方がわからず、使いこなせないことも考えられます。

 

コストゼロ

ツイッターを通常利用する範囲では、コストゼロです。

 

発展の可能性大

日向市は市民向けに、災害時には、#日向市災害ツイッターハッシュタグを付与した情報提供を呼び掛けています。

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日向市消防団のツイートにも、このハッシュタグ#日向市災害 がついています。また少数ですが、台風10号接近中に一般市民から情報提供ツイートもありました。

今後、消防団に加えて、一般市民や他の災害対応組織から#日向市災害をつけた災害情報が数多く投稿されれば、迅速に市内の状況を把握できる情報源として、その価値はさらに高まると思います。

さらに、市民相互の災害時の迅速な情報共有が進むことにより、市民の自律的な行動、市民相互の救助活動=共助のきっかけ、ひいては地域防災力の向上にもつながると思います。詳細については、このブログ末尾のスライドをご覧ください。

 

消防団の活動PR

消防団が災害時、どんな活動をしているのか?多くの市民は知らないと思います。日向市消防団のツイートを見れば、市民へのPRになります。さらに、市民から感謝のリプライが寄せられることで個々の消防団員のモチベーション向上にもつながると思います。さらには若手消防団員の確保にも好影響があるかもしれません。

 

デメリット

こうした災害時のツイッター活用の提案に対して、熊本地震ではデマが投稿されたやん!情報の信頼性やデマはどないすんねんとか、スマホ使えんツイッター使えない人はどないすんねん、といった簡単に対処可能な反対意見が出ます。こうしたICT嫌いのステレオタイプの現状維持派が大勢存在することが、日本においてDXが進まない根本的原因と思います。

 

www.slideshare.net

 

 

 

 

 

 

フェーズフリー = 災害専用システムは使われない

災害時には、迅速な被災状況等の把握が重要です。このため、一部の市町村では、スマホのアプリを開発し、住民から災害時の状況について情報提供してもらう取り組みがあります。

 

東京都東村山市の事例

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茨城県常総市の事例

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この東村山市常総市の事例、2つとも、ダメだと思います。

理由は、「災害専用システムは災害時に使われない。」といった過去災害の様々な教訓から、多くの人が言っている定説があり、この定説からダメと評価されます。

災害時にだけ使うものは、災害時には使われない。平時から使っているものを、災害時に活用する発想が必要です。

別の言葉では「フェーズフリー(Phase Free)といった概念も提唱されています。

フェーズフリー

『平常時と災害時という社会のフェーズ(時期、状態)を取り払い、普段利用している商品やサービスが災害時に適切に使えるようにする価値』

 

想像するに、事例の市役所では、上記の定説を全く考慮していないと思います。

 

一般論として、アプリを開発する労力と、アプリを多くの人に使ってもらう労力を比較すると、圧倒的に後者の労力が大きい、と言われてます。
事例の市役所は、予算を獲得してアプリ開発を外注し、アプリが完成して満足。市役所が開発した災害用のアプリなんだから市民は当然使うだろう、と担当者が思っているかどうか定かではありませんが、これに近い状況と想定されます。

そんなことはない、事実誤認だ!といった情報をお持ちの方は、ぜひご連絡いただきたく、お願いします。

 

私が提唱している災害時のツイッター活用は、定説=フェーズフリーに沿った手法です。

 

www.slideshare.net

災害時のツイッター活用

災害時のツイッター活用に関する私見です。

 

地方自治体等へ災害時の状況把握にツイッターを活用することを提案すると、以下のようなステレオタイプの否定意見が出ます。

意見1

「大多数が匿名のツイッター情報は信頼性が無い。そんな情報源は災害時に使えない。」

意見2

熊本地震の際に、ライオン逃げたとデマがツイッターに投稿され混乱が生じた。そのような情報源を使うべきではない。」

 

学識者、有識者、行政幹部、ITの専門家など、このようなに考える人が大勢います。

ホントにそうでしょうか?


埼玉県和光市富山県富山市などでは、防災訓練の一環として、住民を対象に#◯◯市災害をつけて現地状況をツイートする訓練を実施しています。訓練ツイートを見ると、一部少数ふざけた内容のツイートが投稿されるケースもありますが、無視すれば済む程度です。大多数は真面目な投稿です。和光市では、ゲリラ豪雨の際に市内の冠水状況が投稿され、迅速な状況把握に役立った事例もあります。この際には不適切投稿はゼロでした。

 

すなわち、

防災訓練で、住民が現地情報をツイートする訓練を実施しておくと、災害時に役立つ情報が得られます。無料

 

デマに対してはどうでしょうか?私の考えを以下に示します。

  1. ツイッター以前の関東大震災や明治・江戸時代の災害でもデマは存在
  2. 災害時のデマには、意図的なデマ、不安感が伝聞・拡大されデマに至るケースなど、様々なケースあり
  3. デマをゼロにすることは不可能。デマが出ることを想定すべき
  4. デマ対策の基本は、デマの否定情報や正確な情報を広く周知すること
  5. #◯◯市災害」を付けて、デマの否定情報等をツイートすることで、不安・混乱の早期沈静化が期待される。

 

熊本地震の事例をベースに説明します。
熊本地震では「ライオン逃げた」のデマがツイートされ、ツイッター特有の拡散力により、多くの人にデマ情報が届き、これが原因で住民の一部に不安が生じました。ネット上では早期にこれはデマと特定され、投稿者に対して多くの警告ツイートが投稿されました。しかしデマ情報で不安になった人には、その否定情報等が伝わらない状況でした。

もし「熊本市災害」のハッシュタグが、多くの熊本市民に浸透していれば、下記のようなツイートで、不安になった人を安心させること、すなわち効果的なデマ対策が可能になると思います。

 

「ライオン逃げたの添付画像は、過去の画像から引用されたものであり、これはデマの可能性が高いです。#熊本市災害」

あるいは動物園の公式アカウントから

「当園のライオンは一匹も逃げていません。ご安心ください。 #熊本市災害」


上記のようなツイートを投稿するのは、誰でも良いと思います。行政や当該施設の公式がベストですが、それ以外に、マスコミ、SpecteeなどSNS分析の民間会社、ネットの住民、現地の住民など。とにかく、デマを発見・特定した人であれば、誰でも、熊本市外の人でも構わないと思います。

 

まとめると、

行政として、災害時にデマがツイートされる恐れがあるからツイッターを使わない、といった発想はダメ

昔から災害時にはデマが出るので、これを想定しておくべき。

ツイッターを適切に活用すれば、効率的なデマ対策になる。

 

話題を変えます。
2019年の台風19号の際、長野県防災ではハッシュタグ#台風19号長野県被害』を付けた被害状況のツイートを呼びかけました。

被災状況のツイートに加えて、多数の救助要請のツイートがあり、結果として関係機関と情報共有して約50件の救助に役立てたとのことです。

12月1日に開催されたFUKKO STUDYのイベントに登壇した長野県防災の中の人の話では、長野県外から、県内在住の知り合いの救助要請を投稿したケースもあった、とのことです。

 ツイッターは、誰でも投稿・閲覧できるオープンなシステムであり、双方向のコミュニケーションも可能であることから、県外からの救助要請の情報に基づき、詳細状況を確認しながら救助を行うなど柔軟な対応が可能になるものと思います。


情報の信頼性を重視して、限られた一部の人しか情報入力できないシステム。情報内容の真偽を行政が確認した後、情報をオープンにするシステム。被災情報に限定しそれ以外を受け付けないシステムなどでは、災害時の柔軟・迅速な対応は難しくなると思います。

 

さいごに、

 「ツイッターの匿名情報には信頼性が無い。だから使わない。」と考えることは、

車は交通事故の恐れがある。だから車は使わない。」と考えるのと同じ。デメリットだけに着目メリットを無視する思考です。

車は、十分に注意して運転すれば、便利な乗り物です。社会活動に不可欠な交通手段です。

ツイッターも、デマなど信頼性に注意して活用すれば、有用・不可欠な情報源です。

災害時、SNSの未確認情報をどうする?

2019年12月にNHKの災害特集ドラマの中で、SNSの未確認情報をどうするか?といった場面がありました。

 

ドラマを要約すると

  • 架空の放送局の中で、工場被災で毒ガスの発生情報がSNSに投稿され、未確認情報だからと放送せず。結果として毒ガスで犠牲になる人が出た。
  • 次に、堤防が液状化で壊れている情報がSNSに投稿され、未確認情報であるが、信頼できると判断し、放送の中で避難を呼びかけた。

こんな感じです。これについて思うところを書きます。

 

SNS、特にツイッターは、ほどんどが匿名アカウントであり、投稿内容については信頼性が無いと考えるべきです。

行政やテレビ局などは、ツイッターで事件・事故・災害の端緒情報をキャッチしても、外部向けに情報発信・情報提供する際には、事前に事実確認するのが必要です。

 

ただし、現地に行って事実確認ができない場合でも、投稿された情報の信頼性を評価することは可能です。例えば、以下の方法が考えられます。

  1. 複数のアカウントから、同様趣旨の投稿があれば、その情報の信頼性は高いと評価できます。逆に、情報ソースが一つのアカウントである場合は、信頼性は低くなります。
  2. 当該アカウントのプロフィール、投稿履歴を見ることで、投稿者が日常的にどういった投稿をしているか、投稿者の生活エリアを想定して、情報の信頼性を評価できます。
  3. 自らが見た情報、自ら撮影した写真を投稿しているのか、あるいは他者の情報を引用しているのか、文脈から評価し、また添付画像が他のサイトからパクったものかも、類似画像検索などで確認できます。

 

個人レベルでも、ショッキングな内容のツイートを見つけた場合、安易にリツイートせず、上記のような方法で、自分なりに評価して、対応することが必要と思います。信頼性が評価できない場合は、デマ拡散の片棒を担うリツイートは絶対にすべきではないです。

 

災害ではありませんが、リツイートしたことで、損害賠償の支払い命令に至った事例もあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

ツイッター情報で共助を

blog.twitter.com

 

台風19号における長野県防災のツイッター活用が話題です。

ツイッタージャパンのブログでも紹介されています。

 

要約すると、

  1. 台風19号の際、長野県防災のツイッターから、被害状況の投稿を呼びかけるツイート。(ハッシュタグは『 #台風19号長野県被害 』)
  2. すると、多数の救助要請のツイートが!
  3. 長野県防災は関係機関と情報共有し、結果として約50件の救助につなげた

 

災害時にツイッターを活用して、住民等へ情報提供=ツイートを求める方式は、埼玉県和光市などでも実施されており、様々なメリットがあります。

・迅速な状況把握が可能

・電話より圧倒的につながりやすい

・情報受信に応対者を拘束しない

・写真等を添付可能

・双方向のやりとりが可能

・システムの開発、維持のコスト不要

 

さらに、この方式は共助に発展する可能性があると思います。想定するのは以下の流れです。

  1. 被災者が救助要請をツイート
  2. しかし、公助は手一杯で、すぐに対応できない
  3. 近隣住民が救助要請のツイートを見て、救助

 

大災害では、時として公助は手一杯になり、自助と共助が重要。共助のベースとなるのは地域コミュニティですが、近年は衰退傾向。そこで、ツイッター+地域別のハッシュタグを活用した防災訓練を実施し、被災状況等の災害情報を共有するローカルなネットコミュニティを醸成する。このローカルなネットコミュニティが、災害時に共助のベースとして活躍する。

この方向に進むよう、自治体は積極的に取り組むべきと思います。

詳細は下記スライドをご覧ください。

www.slideshare.net

令和時代の半鐘は、ツイッター

台風19号関連の新聞記事があります。

mainichi.jp

要約すると、堤防決壊など危険が迫る中、消防団が半鐘を連打して、住民に危険を知らせた、とのことです。

 

この記事について、思うところを書きます。

 

まず、今の時代、そもそも半鐘がある地区は郊外の田舎で、都市部では見かけません。では、消防団が危険な状況を、一刻も早く周辺住民に知らせるにはどうしたらいいんでしょう?

 

災害用の野外スピーカー、エリアメール、なんちゃらアラート、自治体ごとのスマホアプリとか、いろいろあるようですが、消防団が危険な状況を把握して、それを市役所に連絡して、さらにそれから諸々の時間がかかると想定されます。市役所が混乱していて、対応できないことも十二分に想定されます。

 

ベストの選択は、消防団が、その場で、ツイッターに投稿することです。ツイッターに投稿した瞬間、その情報は誰でも閲覧可能になります。

 

ただし、その前提として、普段から防災訓練などを通じて、消防団としての実名アカウントから、現場の状況を #⚫⚫市災害 のハッシュタグと写真を添付してツイッターに投稿する。そして、そのことを住民に周知しておくことが必要です。

さらに市としても、消防団からの危険を知らせるツイートを見つけたら、すかさずリツイートして、より多くの住民に知らせるといった方法も有効です。

 

このようなツイッター活用で、現場の状況を速やかに住民に知らせることが可能になると思います。

 

実例として、埼玉県和光市消防団では、分団ごとのツイッターアカウントから、防災訓練の時に所轄エリアの状況をツイートしています。ツイートには #和光市災害ハッシュタグをつけています。

twitter.com

 

といったことで、令和の現代社会において、ツイッター#⚫⚫市災害 は半鐘の代替になると思います。さらに、写真と文章で、現状を判りやすく伝えることが可能です。

 

また、定説として「災害時に、災害専用システムは使われない。日常的に使っているシステムを活用すべし!」と言われています。このような災害時のツイッター活用は、まさにこの定説に合致したものになります。

 

スマホ持っていない、ツイッター使えない、そういった幼児や認知症の高齢者など、少数の情報弱者に対しては、周囲の人が助ければ済むと思います。

長野県の災害時ツイッター活用について

www3.nhk.or.jp

NHKニュースでも取り上げられた、災害時の長野県のツイッター活用について、考察を加えます。

 

経緯を整理すると

10月12日17時11分に、長野県防災のツイッターアカウントから下記のように、被害についての情報提供を呼びかけるツイートがありました。このツイートの中で、ハッシュタグ#台風19号長野県被害 と画像や位置情報を付けるように、との記載があります。 

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長野県防災からのツイート

 

さらに、10月13日5時50分にも、ほぼ同じ内容で、被害の情報提供を呼びかけるツイートがあり、そして同日8時13分には、救助が必要な人は写真や位置がわかる情報をツイートしてください、との内容でツイート(下記)がありました。

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 こうした長野県防災のツイッターでの呼びかけに呼応して、救助要請等のツイートがあり、それらが50件の救助に役立ったとのことです。

 

2019年12月1日にFUKKO STUDY と題するイベントが開催され、その中で実際に長野県防災のツイッターを運用している人も登壇し、プレゼンを聴くことができました。そのポイントを以下に整理します。

  • もともと #台風19号長野県被害 のハッシュタグで被害等の情報を収集することはルール化していたが、救助要請のツイートが多くなり、救助要請にツイート情報を活用
  • 救助要請の投稿者は、本人がツイート、親戚・知人等がツイートで概ね半々(イメージ)
  • ツイートの理由は、119番につながらない、つながって救助要請したけど追加(念の為)など
  • ちなみに、長野県の外で119番に通報すると、電話した地域の消防につながり、そこから長野県の消防に電話が転送されるが、つながらないか、消防は手一杯な状況と想定

 

  • 救助要請のツイートに対しては、まず長野県防災において、リプライなどで状況を確認し、情報を整理し、関係機関と情報共有。その方法は2つ
  1. 関係機関が集結する災害対策本部において情報共有
  2. 情報共有システムに情報入力

 

  • 現行、正式にツイートを救助につなげるスキームは無い
  • 個人情報の観点ではDMが望ましいかもしれないが、DMには課題あり
  • 救助後に、投稿者に救助要請のツイートの削除をお願いした。結果として、救助されたかを容易に確認できて、これでオッケー

 

  • 励ましのリプライ「絶対に助ける!」について
  • 一般的に行政では、大問題になる発言。助けられなかったらウソになる。責任が問われる。
  • しかし当時の現場では、要救助者に希望を持ってもらうことが何よりも大事
  • 結果として、炎上など問題には一切なってない

 

  • ツイッターの救助要請は、現状、使えない
  • 119番、110番等に加えて、救助要請をツイートすることで、まだ救助されていない要救助者の確認に使える
  • 救助のバックアップツールとしての価値が高い

 

  • 自治体公式ツイッターの位置づけについて
  • 既存広報ツールを凌駕
  • 住民と行政が新たな関係を構築するツール

  

以上が、FUKKO DESIGN での中の人のプレゼンのポイントです。

これらを踏まえて、災害時のツイッター活用することについて、考察します。

 

① つながりやすい

 一般に、災害時には電話はつながりにくくなります。今回の台風19号の際にも119番への通報がつながりにくかったと言われています。一方、パケット通信を利用するツイッターは、電話に比べて圧倒的につながりやすいです。

 災害時に、住民から情報提供を求めたり、住民や親戚が救助要請する際に、つながりやすい点で、ツイッターのメリットは大きいと言えます。

 

 

② 膨大な件数に対応可能

 119番への電話は、電話回線数、応対スタッフの人数などから、同時に対応できる件数には限界があります。一方、ツイッターへの投稿は、コンピュータ内の情報処理であり、サーバ処理能力も世界最強クラスと言われていることから、同時に膨大な件数に対応可能です。

 災害時に、住民からの情報を集約する際に、同時に膨大な件数を受信可能である点で、ツイッター活用のメリットは大きいと言えます。

 

  

③ 写真や位置情報で的確な状況把握

 ツイッターは投稿の際に、写真やジオタグと呼ばれる位置情報(衛星測位に基づく緯度経度の情報)を付与できる機能があります。

 写真があればリアルに状況を把握するのに役立ちます。また、ジオタグがあればピンポイントで場所の特定が可能です。ちずツイなどのサイトを使えば、自動的に地図上に展開・表示できて便利です。なおジオタグが付与されなくても、投稿文に番地名等を記載することで、位置の特定は可能となります。

 このように、写真と位置情報を活用することで、的確に状況を把握できる点で、ツイッター活用のメリットは大きいと言えます。

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ちずツイの表示例

 

 

システム開発・維持のコストゼロ

 ツイッターを活用するってことは、日常的に使っているスマホやパソコンと、無料のツイッターサービスを使うだけなので、特殊なシステム開発やサーバ維持などに要するコストはゼロです。

 

 

⑤ 日常利用のシステムを災害時にも活用

 多くの災害事例を踏まえた定説として「災害時に災害専用システムは使われない。日常使っているシステムを活用するべき。」と言われています。

 この事例は上述の定説の通りに、日常的に大勢の人が使っているツイッターを災害時に活用するものであることから、システムのトラブルなく、使い方がわからない等の問題もなく、多くの情報が寄せられたものと思います。

 

 

ハッシュタグ命名

 今回使われたハッシュタグ #台風19号長野県被害 は、今回の台風19号限定のものであり、次の災害では、当然、違うハッシュタグになるものと考えられます。災害のたびにハッシュタグを変えることについては、混乱、間違いにならないか心配されます。

 また、被害状況のツイート、救助要請のツイート、など目的別にハッシュタグを変えるのも良くないと思います。投稿者側の混乱の原因や間違いになる可能性があります。投稿者の負担を減らし、間違いの可能性も減らすように、被災者=投稿者ファーストで考えるべきと思います。また、ひとつのツイートの中に、両方の情報が入っている可能性もあります。

 ひとつの提案として、災害時のハッシュタグは、#⚫⚫県災害 #⚫⚫市災害 と全国的に命名ルールを統一するのが良いと思います。当該地域の災害に関する情報は、全てこのタグで統一し、被災状況、救助要請などなんでオッケーとすべきと思います。

 被災状況を把握するために検索した人が、自分の近くで救助を求めている人の存在をツイートで認知し、共助につなげるようなことも想定されるので、災害時のハッシュタグは地域別にシンプルに統一すべきです。

 絶対にダメなのは、#災害 など全国共通のタグを使うことです。ノイズ情報が多く、場所の絞り込みも困難になるなど、デメリットが大きいです。また、#⚫⚫県被害 #⚫⚫県防災 #災害情報⚫⚫県 など地域別にバラバラの命名をすると、混乱の原因となるので良くないと思います。

 

 

⑦ 訓練の実施

  今回の長野県の事例は、事前告知なしの災害発生時のぶっつけ本番でした。結果として救助に役立ちましたが、できれば、防災訓練による事前練習を実施しておくべきと思います。

 和光市の事例では、防災訓練のメニューの一つとして、現地状況を#和光市災害ハッシュタグを付けてツイッターに投稿する訓練を実施したところ、その後日、ゲリラ豪雨の際、市役所からのアナウンスが無くとも、市民が自発的に市内の状況を写真付きでツイートし、状況把握に役立ったとのことです。

 

 

⑧ 様々な関係者の参加

 今回の事例では、長野県から住民に対して被害状況のツイッター投稿を呼びかけ、その中で救助要請に関する投稿があったことから、それらの情報を救助活動に活用したものです。

 被害状況を投稿するのは、住民だけでなく、消防団水防団、災害協定を締結している地元建設会社も、投稿に参加すべきと思います。できれば、行政による災害時の点検・パトロールの実施者も同じように、投稿すべきと思います。

 そうなれば、災害時、当該ハッシュタグで検索することにより、誰でも迅速に現地の情報を把握することが可能となり、住民の自主避難など的確な行動につながると思います。

 

 

 

⑨ 共助のきっかけとなる可能性

 今回の事例は、ニュース情報を見る範囲では、行政による救助、いわゆる公助に役立てた、とのことです。一方、大規模災害では、時として公的な救助が手一杯となり、住民相互に助け合う、いわゆる共助が重要と言われています。なお、ツイッター投稿は、非公開アカウントでなければ、誰でも投稿を見ることができます。

 このようなツイッターハッシュタグの災害情報共有が定着すれば、下記のような共助のきっかけとなる可能性も考えられます。

  1. 災害時に被災者が救助要請をツイート
  2. 公助が手一杯、交通マヒ等の理由ですぐに救助に行けない
  3. ツイートを見た近隣住民が現場に行き救助活動

 このように、災害時のツイッター活用は、共助=近隣の住民が助けるようなケースに役立つ可能性があると思います。

 救助を要請したいが、自分の居場所は絶対に他人に知られたくない、そういった人は、119番の電話をすればよいと思います。

 

 

⚫さいごに

 テレビが一般家庭に普及するようになって、大きな社会変革が生じました。スマホSNSの個人への普及は、その時以上に大きなインパクトを与える可能性があると思います。

 今後、全ての行政組織が積極的に取り組むべきと思います。

 ぜひ、このプレゼン資料も御覧ください。

www.slideshare.net