実るほど頭を垂れる稲野かな

災害時のツイッター活用の提案

災害時のツイッター活用

災害時のツイッター活用に関する私見です。

 

地方自治体等へ災害時の状況把握にツイッターを活用することを提案すると、以下のようなステレオタイプの否定意見が出ます。

意見1

「大多数が匿名のツイッター情報は信頼性が無い。そんな情報源は災害時に使えない。」

意見2

熊本地震の際に、ライオン逃げたとデマがツイッターに投稿され混乱が生じた。そのような情報源を使うべきではない。」

 

学識者、有識者、行政幹部、ITの専門家など、このようなに考える人が大勢います。

ホントにそうでしょうか?


埼玉県和光市富山県富山市などでは、防災訓練の一環として、住民を対象に#◯◯市災害をつけて現地状況をツイートする訓練を実施しています。訓練ツイートを見ると、一部少数ふざけた内容のツイートが投稿されるケースもありますが、無視すれば済む程度です。大多数は真面目な投稿です。和光市では、ゲリラ豪雨の際に市内の冠水状況が投稿され、迅速な状況把握に役立った事例もあります。この際には不適切投稿はゼロでした。

 

すなわち、

防災訓練で、住民が現地情報をツイートする訓練を実施しておくと、災害時に役立つ情報が得られます。無料

 

デマに対してはどうでしょうか?私の考えを以下に示します。

  1. ツイッター以前の関東大震災や明治・江戸時代の災害でもデマは存在
  2. 災害時のデマには、意図的なデマ、不安感が伝聞・拡大されデマに至るケースなど、様々なケースあり
  3. デマをゼロにすることは不可能。デマが出ることを想定すべき
  4. デマ対策の基本は、デマの否定情報や正確な情報を広く周知すること
  5. #◯◯市災害」を付けて、デマの否定情報等をツイートすることで、不安・混乱の早期沈静化が期待される。

 

熊本地震の事例をベースに説明します。
熊本地震では「ライオン逃げた」のデマがツイートされ、ツイッター特有の拡散力により、多くの人にデマ情報が届き、これが原因で住民の一部に不安が生じました。ネット上では早期にこれはデマと特定され、投稿者に対して多くの警告ツイートが投稿されました。しかしデマ情報で不安になった人には、その否定情報等が伝わらない状況でした。

もし「熊本市災害」のハッシュタグが、多くの熊本市民に浸透していれば、下記のようなツイートで、不安になった人を安心させること、すなわち効果的なデマ対策が可能になると思います。

 

「ライオン逃げたの添付画像は、過去の画像から引用されたものであり、これはデマの可能性が高いです。#熊本市災害」

あるいは動物園の公式アカウントから

「当園のライオンは一匹も逃げていません。ご安心ください。 #熊本市災害」


上記のようなツイートを投稿するのは、誰でも良いと思います。行政や当該施設の公式がベストですが、それ以外に、マスコミ、SpecteeなどSNS分析の民間会社、ネットの住民、現地の住民など。とにかく、デマを発見・特定した人であれば、誰でも、熊本市外の人でも構わないと思います。

 

まとめると、

行政として、災害時にデマがツイートされる恐れがあるからツイッターを使わない、といった発想はダメ

昔から災害時にはデマが出るので、これを想定しておくべき。

ツイッターを適切に活用すれば、効率的なデマ対策になる。

 

話題を変えます。
2019年の台風19号の際、長野県防災ではハッシュタグ#台風19号長野県被害』を付けた被害状況のツイートを呼びかけました。

被災状況のツイートに加えて、多数の救助要請のツイートがあり、結果として関係機関と情報共有して約50件の救助に役立てたとのことです。

12月1日に開催されたFUKKO STUDYのイベントに登壇した長野県防災の中の人の話では、長野県外から、県内在住の知り合いの救助要請を投稿したケースもあった、とのことです。

 ツイッターは、誰でも投稿・閲覧できるオープンなシステムであり、双方向のコミュニケーションも可能であることから、県外からの救助要請の情報に基づき、詳細状況を確認しながら救助を行うなど柔軟な対応が可能になるものと思います。


情報の信頼性を重視して、限られた一部の人しか情報入力できないシステム。情報内容の真偽を行政が確認した後、情報をオープンにするシステム。被災情報に限定しそれ以外を受け付けないシステムなどでは、災害時の柔軟・迅速な対応は難しくなると思います。

 

さいごに、

 「ツイッターの匿名情報には信頼性が無い。だから使わない。」と考えることは、

車は交通事故の恐れがある。だから車は使わない。」と考えるのと同じ。デメリットだけに着目メリットを無視する思考です。

車は、十分に注意して運転すれば、便利な乗り物です。社会活動に不可欠な交通手段です。

ツイッターも、デマなど信頼性に注意して活用すれば、有用・不可欠な情報源です。