実るほど頭を垂れる稲野かな

災害時のツイッター活用の提案

災害時 ラジオ vs スマホ

先日、車を運転しながらラジオを聴いていると、東日本大震災関連の話題の一環で、大災害では停電でテレビが使えないケースがあり、電池式のラジオを用意しましょう、と話があった。

確かに停電になったら、コンセントの電源を必要とするテレビは使えない。しかしね、今はスマホの時代ですよ。ほとんどの人が肌身離さず携帯しているスマホ。災害時の情報収集はスマホをメインに考えるべきです。

現在は行政機関等からスマホ向けに災害情報が発信されます。緊急時にはスマホにアラームが出るアプリもあります。自ら検索して必要な情報を取得できます。スマホでテレビの緊急ニュースを視ることもこともできます。

ラジオは電池が長持ちしますが、重要な情報を聞き逃したり、必要な情報が流れるまで待っている必要があります。

ドコモなどの通信網がダウンしたり、スマホの電池切れなど、スマホが使えなくなったら、その時はラジオの出番になりますが、スマホが使える状況ならば災害時の情報を得るにはスマホがイチバン有効だと思います。

建設会社の広報について考える

群馬県建設業協会群建協)の「ぐんケン見張るくん」が土木学会の土木広報大賞2021にて、特別賞を受賞されました。改めて、その取り組みについてご紹介、考察したいと思います。

 

「ぐんケン見張るくん」とは災害や大雪の時に現場の状況を逐一ツイッターに投稿する取り組みです。2014年より実施されています。

百聞は一見に如かず。最近の除雪状況の投稿をご覧ください。

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上記の投稿はほんの一例であり、ツイッターで群建協のアカウント @gunken000 を検索すれば誰でも全ての投稿を閲覧できます。

 

さらに、これらの投稿の全てにジオタグと呼ばれる位置情報が付与されています。「ちずツイ」などのサイトで、このように地図上に展開して閲覧できます。

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これにより群馬県内のどこが、どんな状況なのか、簡単に把握することができます。車で外出する際の路面状況の把握などに大いに役立つと思います。

 

大雨や地震などの災害時にはパトロールの実施状況や復旧工事の状況も同様に投稿されています。2015年のみなかみ町の法面災害が発生した時の投稿を以下に示します。

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復旧工事の詳細な状況がわかる情報になっています。

 

テレビなどマスメディアでは、この程度の小規模な法面災害についてはほとんど取り上げません。同様に除雪についても、災害級の大規模立往生は別ですが、通常の降雪は天気予報コーナーで取り上げる程度です。

 

すなわち「ぐんケン見張るくん」は、テレビなどマスメディアでは伝えないローカルな情報、しかし地域住民にとって重要な情報をきめ細かく情報発信していると評価できます。

 

パーパスの視点

 

企業経営においてパーパスが重要と言われています。この場合のパーパスとは「存在意義」と訳されます。企業は、利益を追求するだけでなく、現代社会の課題を踏まえた「存在意義」をアピールすることで、内外の関係者から「信頼」と「共感」を得られ、それが巡り巡って企業の利益につながると言われています。

 

「ぐんケン見張るくん」の取り組みは、災害や除雪時の活動状況を細かく情報発信し、その情報自体が地域住民に役立つことに加えて、情報発信を通じて、地域の建設会社が地域の生活・経済に不可欠な存在であること、すなわち存在意義をアピールしている、と評価できます。

 

新聞広告に「地域の建設会社は災害対応や除雪に取り組んでいます。」と出すよりも、「ぐんケン見張るくん」の情報発信は、地域住民へ群建協(地域の建設会社)のパーパス(存在意義)を強烈かつ継続的にアピールしていると思います。

 

スーパーゼネコンのテレビコマーシャルを見かけることがあります。良いコマーシャルは視聴者に良い企業イメージを植え付けます。しかしそのためには莫大なコストが必要となります。

スマホSNSの普及が進行中である令和の現代社会においては、地域の建設会社は、ソーシャルメディアを通じた地域住民向けの広報に取り組むべきと思います。

災害現場の情報はオープンにすべし

大雨や大地震など、あなたの周囲で災害が発生した場合、どちらの情報が必要ですか。

 市内の被災箇所数
 自分の周囲のリアルな最新状況(異状無しも含む)


被災地の人にとって、被災箇所数など集計・整理された情報①よりも、自分の周囲のリアルな最新情報②が重要です。そうした情報を伝える方法の提案です。

 


一般的に大きな災害が発生すると、関係する行政機関(国・都道府県市町村)に災害対策本部が設置され、対策本部に現場や関係機関から多くの情報が集まります。

 

対策本部では、情報を整理・集計した上で、住民や関係機関へ情報を発信します。この情報の整理の過程で、時間を要し、個別現場の状況写真や異常無しの情報が省略されます。

 

すなわち、対策本部が住民に出す被災箇所数等の集計情報は、迅速性が損なわれ、住民のニーズに沿わないものになっています。

 

 

そこで提案です。

対策本部に集まる現場の被災状況等の情報は、住民を含む誰でも閲覧できるようにするのが良いと思います。言い換えると、現場状況に関する情報は、広く情報共有するべきです。

 

具体的な方法としては、行政職員や消防団、地元建設会社等が現場パトロールの結果をツイッターに投稿する。投稿の際には、写真、位置情報、所定のハッシュタグ(例:#◯◯市災害)を付与する、といった方法です。すなわち、現場から対策本部への報告手段として、ツイッターを活用することになります。

 

実際に群馬県建設業協会では、災害時の現場パトロールの結果をツイッターに投稿する取り組みを実施しています。詳しくは、下記のスライドを御覧ください。

 

www.slideshare.net

 

こうした方法のメリットは、多々あります。

  • 住民はツイッター検索で、自分の周囲の最新状況を簡単に知ることができる。
  • 消防団等現場で活動している者は、隣接エリアの状況を簡単に知ることができる。
  • 関係機関は、対策本部からの報告を待たずに、迅速に個別現場の最新情報を入手できる。
  • 対策本部は関係機関への個別現場の状況報告を省略できる。(仮に市町村等の対策本部が混乱や機能停止しても、現場の情報が迅速に伝わる。)

 

デメリットは、こうした取り組みを理解しない旧来思考の人を説得する労力が必要なだけです。


こうした取り組みが全国的に広まれば、大いに役立つ情報源になると思います。
皆が持っているスマホとPCを用い、皆が使っているツイッターを情報共有プラットフォームとして活用するだけなので、基本的に予算は不要です。ハッシュタグを定め、定期的に訓練を実施するだけです。実際に埼玉県和光市では、住民や消防団が参加した災害時のツイッターによる情報発信の訓練を実施しています。

  

以前から、組織の枠を超えた迅速な災害情報の共有が必要と言われ、災害情報共有システムの構想検討が行われていますが、未だに構想の域を出ていません。

従来発想を変えて、災害時に現場の人が、現場から、現場の状況をオープンに情報発信する。これで解決します。今あるものを活用して、できることから取り組み、やりながら必要な改善を加える。そうしたやり方が良いと思います。

避難する理由を伝えるべき

災害対策基本法が改正され、従来の「避難勧告」が廃止。「避難指示」に一本化されました。(2021年5月20日施行)

この背景は、従来の避難勧告、避難指示の違いがわかりにくい。それが避難の遅れにつながっている、とのことです。

しかし適切な避難行動のためには、なぜ避難が必要なのか、その具体的な理由を伝えることが重要と思います。

例えば、
危険な遊びをしている子供に「やっちゃダメ!」と頭ごなしに叱るだけでは不十分。やってはいけない理由を子供に理解させることが重要。そうした理由を理解した子供は、適切に行動し、さらには応用的な対応も可能になります。

災害時の避難行動も同じ。避難してください!と伝えるだけでなく、河川の水位などの具体的な状況・今後の見通しを伝え、そうした状況なので避難してください、とするべきです。

上意下達、行政から法に基づく避難指示が出たら、住民はツベコベ言わずとっとと避難しろ、とした考えはダメです。

 

それから、想定される問題点をもうひとつ。
避難指示などの情報を発信するのは、市町村です。避難指示の出し遅れは行政責任を問われる可能性があり、従って今後、早め早めに避難指示が出されるケースが想定されます。見方によっては安全側の対応ですが、これを繰り返すと、住民は、またか...とオオカミ少年状態になりかねません。
こうした事態を回避するためにも、災害時の具体的な危険が迫っている状況等を住民にわかりやすく伝える取り組みが重要になると思います。

災害情報のリダンタンシー

リダンタンシー(redundancy)

「冗長性」、「余剰」を意味する英語であり、国土計画上では、自然災害等による障害発生時に、一部の区間の途絶や一部施設の破壊が全体の機能不全につながらないように、予め交通ネットワークやライフライン施設を多重化したり、予備の手段が用意されている様な性質を示す。

(出典:国土交通省 用語解説ページ

 

リダンタンシーは交通ネットワークなどで使われる用語で、一部分がダメになっても全体がダメにならんようにする考えです。ここでは災害情報のリダンタンシーについて考察してみます。

 

国や都道府県などでは災害情報システムの整備等を進めています。しかし近年の様々な災害において、災害情報システムが迅速な状況把握に役立った事例は、聞いたことが無いです。(ご存知の方は、ご連絡下さい。)

これについて、私は市町村に原因があると思います。

 

災害時の市町村は、特に被害が大きい場合、十分に機能しないケースが多いです。原因は、以下の状況になるからです。

  • 庁舎の被災
  • 職員が参集困難(交通麻痺、職員が被災等)
  • 市町村に様々な情報・問い合わせが集中し混乱状態に陥る

 

2011年3月の東日本大震災では太平洋沿岸の多くの市町村は壊滅的被害を受けました。また2016年4月の熊本地震において、熊本県が整備した災害情報システムには、市町村から被災状況等の情報入力が十分に行われなかったと報告されています。この場合、被災地の市町村は避難所の設置運営などの住民対応について、最優先に取り組むことになり、災害情報システムへの情報入力は後回しになります。

このように、市町村の情報に依存する災害情報システムは、被害が大きい場合、迅速な情報収集には使えないことになります。

 

一方、災害時の現場では、消防団、消防署員、建設会社などが、パトロール、救助活動、応急復旧等を行います。住民相互の共助活動も行われます。この際、こうした現場の状況を市町村に報告しても、その情報が有効活用されません。

 

そこで、リダンタンシーの発想、すなわち、市町村が機能しなくとも、現場の災害情報が的確に伝わる仕組みが必要となります。

ちなみに市町村がダメなら都道府県に、といった発想もダメです。都道府県も多くの情報を的確に処理できない可能性があり、そもそも一つの組織にクローズに情報集約する発想はダメです。

そこで提案として、災害時の現場の情報は、誰でもアクセスできるよう、現場からオープンに情報を発信(公開)する方法が良いと思います。

情報発信するのは、消防団、消防署、建設会社、インフラ管理者、そして住民、さらには行政のパトロール等、要は現場にいる誰でも良いです。

実例として、群馬県建設業協会ツイッターによる情報発信があります。同協会では、災害等の際にパトロールや被災箇所の応急復旧対応を行っており、この際、現場の情報を逐一ツイッターに投稿しています。投稿の際には写真と位置情報を付与しています。これらの情報は、群馬県民にとって、迅速に状況を把握できる貴重な情報源となっています。この群馬県建設業協会と同様に、多くの関係者が取り組めば、リアルタイムの災害情報共有が実現します。

これにより例えば、手が空いている消防団が、隣接県の現場で手が足りない実態をリアルタイムに把握して、急ぎ応援に行くようなことも考えられます。

住民も周囲のリアルな状況をリアルタイムに把握して、市町村発表の避難情報等を待たずに、自主避難を判断することも可能となります。

さらに、オープンな情報をベースにAI等を活用した様々な情報提供サービスが開発・普及すると思います。

 

従来方式、すなわち、現場→市町村→都道府県→国の出先機関→国の中枢組織といった組織階層に沿ってクローズに情報を集約する方法では、このようなことは無理です。

 

災害時に現場の情報を現場からオープンに情報発信し、リアルタイムに情報共有する。これこそが、Society5.0に即した方法だと思いませんか?

 

www.slideshare.net

建設会社が災害時に現場状況をツイート

2月13日23時過ぎ、福島県沖を震源とする地震が発生し、福島県浜通りなどで震度6強を記録しました。

 

群馬県では震度4を記録しました。群馬県内の建設会社(群馬県建設業協会)は、緊急パトロールを実施し、そのパトロールの実施状況を逐一ツイッターに投稿しました。(各投稿には、ジオタグ=位置情報、写真が添付されています。)
 個別投稿はこちらにまとめてあります。

 

togetter.com

結果的には群馬県内には大きな被害はなく、投稿のほとんどは、異常なしを伝える内容でした。

 

さて、こうした、

 災害発生 → 建設会社がパトロー → 現地状況を逐一ツイート

といった取り組みについて考察します。

 

 

一般的なケースでは、建設会社から市町村等の行政(施設管理者)へパトロール結果を報告することになりますが、災害時に市町村から個別・詳細な情報は出ません。特に個別個所の異常なし、といった情報は出ません。

しかし、自分自身、家族・友人が被災地近辺にいる場合には、一刻も早く特定エリアの詳細、異常の有無を知りたい、といった情報ニーズになります。

テレビのニュースは、目立つ現場ばかり取り上げるので、こうした情報ニーズには対応できていません。異常が無いといった情報は取り上げません。

 

ちなみに行政の災害対策本部でも、初動対応の検討のために一刻も早く状況を知りたい、といった情報ニーズがあります。パトロールから戻り、情報を所定の様式に整理して、上司のハンコ(了解)を得てから、災害対策本部に報告、なんてことでは遅いです。現場パトロールが逐一、異常の有無を含む詳細を現場から写真付きでツイートすることは、災害対策本部においても有益な情報源になると思います。

国や都道府県の災害対策本部では、市町村から情報が来ないとやきもきするケースが多いですが、現場からの逐一ツイートは、こうした状況を抜本的に改善することができます。

 

建設会社が現場からツイートするのは、迅速に詳細を知りたい、といったニーズに対応した手法と評価できます。

www.slideshare.net

 

 

 

 

災害時には市町村の機能停止を想定すべき

NHK NEWS WEBの記事(2021年1月7日)に「全国の184自治体で庁舎が津波で浸水するリスク」との記事が掲載されています。

www3.nhk.or.jp

 

ざっくり言うと、184の自治体の庁舎が津波浸水区域にあるってことです。184の自治体の中には、青森県、神奈川県、徳島県大分県といった県庁も含まれています。

 

NHKの記事では津波浸水についての言及ですが、それ以外にも、大雨で浸水するケース、地震で庁舎が被災するケースなども想定されます。記憶に新しい事例としては、2015年9月の豪雨災害で、鬼怒川が決壊し、茨城県常総市の市役所周辺が浸水し、市役所が一時孤立した事例があります。

diamond.jp

このように市役所、町役場など庁舎に関するハード面の問題点に加えて、ソフト面の問題点、具体的には①職員が集まらない、②混乱状態になる。の2点があります。

 

まず、予測できる台風では事前に関係職員の待機が可能ですが、地震は予測できません。大きな地震では道路・鉄道等は交通麻痺=使えなくなります。職員が集まらなければ、自治体は機能しません。最近は在宅勤務が行政でも増えてますが、災害対応のリモート対応は無理だと思います。

 

そして最大の問題点は、ほとんどの自治体職員は災害に慣れておらず、災害時に職員の処理能力を超えた情報・問い合わせが集中し、自治体の中が混乱状態になり、的確に情報処理の上、判断・行動ができなくなることです。これは災害時、自治体のホームページにアクセスが集中し、ホームページの閲覧ができなくなるのと似ています。ホームページなら、サーバーの能力を増強すれば対応できますが、災害時の職員の情報処理能力をアップさせるのは、そう簡単ではないです。

 

私自身、国土交通行政に33年間携わり、その間の経験・事例分析から勘案すると、大きな災害が発生した直後には、多くの自治体では上記のようになります。実態としてそうなっていることを踏まえると、災害の直後には自治体は的確に機能しない、的確に機能することを期待してはいけない、と思います。

 

と言うことで、ブログのタイトルにあるように、災害時には市町村の機能停止を想定すべきと思います。

 

災害対策基本法に災害時の市町村の責務が記載されていますが、法律に書くだけでは問題は解決しません。むしろ災害時に市町村が的確に機能しないことは、実例を踏まえて「よくあること」として想定すべきです。

 

さて、都道府県が整備している災害情報システムでは、現場の情報を市町村(職員)が入力することになっています。熊本地震の際には、熊本県の災害情報システムに災害情報が迅速に入力されなかったと報告されています。

 

災害時の市町村の状況を想定し、これを踏まえてシステム設計すべきと思います。

www.slideshare.net