実るほど頭を垂れる稲野かな

災害時のツイッター活用の提案

災害情報のリダンタンシー

リダンタンシー(redundancy)

「冗長性」、「余剰」を意味する英語であり、国土計画上では、自然災害等による障害発生時に、一部の区間の途絶や一部施設の破壊が全体の機能不全につながらないように、予め交通ネットワークやライフライン施設を多重化したり、予備の手段が用意されている様な性質を示す。

(出典:国土交通省 用語解説ページ

 

リダンタンシーは交通ネットワークなどで使われる用語で、一部分がダメになっても全体がダメにならんようにする考えです。ここでは災害情報のリダンタンシーについて考察してみます。

 

国や都道府県などでは災害情報システムの整備等を進めています。しかし近年の様々な災害において、災害情報システムが迅速な状況把握に役立った事例は、聞いたことが無いです。(ご存知の方は、ご連絡下さい。)

これについて、私は市町村に原因があると思います。

 

災害時の市町村は、特に被害が大きい場合、十分に機能しないケースが多いです。原因は、以下の状況になるからです。

  • 庁舎の被災
  • 職員が参集困難(交通麻痺、職員が被災等)
  • 市町村に様々な情報・問い合わせが集中し混乱状態に陥る

 

2011年3月の東日本大震災では太平洋沿岸の多くの市町村は壊滅的被害を受けました。また2016年4月の熊本地震において、熊本県が整備した災害情報システムには、市町村から被災状況等の情報入力が十分に行われなかったと報告されています。この場合、被災地の市町村は避難所の設置運営などの住民対応について、最優先に取り組むことになり、災害情報システムへの情報入力は後回しになります。

このように、市町村の情報に依存する災害情報システムは、被害が大きい場合、迅速な情報収集には使えないことになります。

 

一方、災害時の現場では、消防団、消防署員、建設会社などが、パトロール、救助活動、応急復旧等を行います。住民相互の共助活動も行われます。この際、こうした現場の状況を市町村に報告しても、その情報が有効活用されません。

 

そこで、リダンタンシーの発想、すなわち、市町村が機能しなくとも、現場の災害情報が的確に伝わる仕組みが必要となります。

ちなみに市町村がダメなら都道府県に、といった発想もダメです。都道府県も多くの情報を的確に処理できない可能性があり、そもそも一つの組織にクローズに情報集約する発想はダメです。

そこで提案として、災害時の現場の情報は、誰でもアクセスできるよう、現場からオープンに情報を発信(公開)する方法が良いと思います。

情報発信するのは、消防団、消防署、建設会社、インフラ管理者、そして住民、さらには行政のパトロール等、要は現場にいる誰でも良いです。

実例として、群馬県建設業協会ツイッターによる情報発信があります。同協会では、災害等の際にパトロールや被災箇所の応急復旧対応を行っており、この際、現場の情報を逐一ツイッターに投稿しています。投稿の際には写真と位置情報を付与しています。これらの情報は、群馬県民にとって、迅速に状況を把握できる貴重な情報源となっています。この群馬県建設業協会と同様に、多くの関係者が取り組めば、リアルタイムの災害情報共有が実現します。

これにより例えば、手が空いている消防団が、隣接県の現場で手が足りない実態をリアルタイムに把握して、急ぎ応援に行くようなことも考えられます。

住民も周囲のリアルな状況をリアルタイムに把握して、市町村発表の避難情報等を待たずに、自主避難を判断することも可能となります。

さらに、オープンな情報をベースにAI等を活用した様々な情報提供サービスが開発・普及すると思います。

 

従来方式、すなわち、現場→市町村→都道府県→国の出先機関→国の中枢組織といった組織階層に沿ってクローズに情報を集約する方法では、このようなことは無理です。

 

災害時に現場の情報を現場からオープンに情報発信し、リアルタイムに情報共有する。これこそが、Society5.0に即した方法だと思いませんか?

 

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