実るほど頭を垂れる稲野かな

災害時のツイッター活用の提案

令和時代の半鐘は、ツイッター

台風19号関連の新聞記事があります。

mainichi.jp

要約すると、堤防決壊など危険が迫る中、消防団が半鐘を連打して、住民に危険を知らせた、とのことです。

 

この記事について、思うところを書きます。

 

まず、今の時代、そもそも半鐘がある地区は郊外の田舎で、都市部では見かけません。では、消防団が危険な状況を、一刻も早く周辺住民に知らせるにはどうしたらいいんでしょう?

 

災害用の野外スピーカー、エリアメール、なんちゃらアラート、自治体ごとのスマホアプリとか、いろいろあるようですが、消防団が危険な状況を把握して、それを市役所に連絡して、さらにそれから諸々の時間がかかると想定されます。市役所が混乱していて、対応できないことも十二分に想定されます。

 

ベストの選択は、消防団が、その場で、ツイッターに投稿することです。ツイッターに投稿した瞬間、その情報は誰でも閲覧可能になります。

 

ただし、その前提として、普段から防災訓練などを通じて、消防団としての実名アカウントから、現場の状況を #⚫⚫市災害 のハッシュタグと写真を添付してツイッターに投稿する。そして、そのことを住民に周知しておくことが必要です。

さらに市としても、消防団からの危険を知らせるツイートを見つけたら、すかさずリツイートして、より多くの住民に知らせるといった方法も有効です。

 

このようなツイッター活用で、現場の状況を速やかに住民に知らせることが可能になると思います。

 

実例として、埼玉県和光市消防団では、分団ごとのツイッターアカウントから、防災訓練の時に所轄エリアの状況をツイートしています。ツイートには #和光市災害ハッシュタグをつけています。

twitter.com

 

といったことで、令和の現代社会において、ツイッター#⚫⚫市災害 は半鐘の代替になると思います。さらに、写真と文章で、現状を判りやすく伝えることが可能です。

 

また、定説として「災害時に、災害専用システムは使われない。日常的に使っているシステムを活用すべし!」と言われています。このような災害時のツイッター活用は、まさにこの定説に合致したものになります。

 

スマホ持っていない、ツイッター使えない、そういった幼児や認知症の高齢者など、少数の情報弱者に対しては、周囲の人が助ければ済むと思います。

長野県の災害時ツイッター活用について

www3.nhk.or.jp

NHKニュースでも取り上げられた、災害時の長野県のツイッター活用について、考察を加えます。

 

経緯を整理すると

10月12日17時11分に、長野県防災のツイッターアカウントから下記のように、被害についての情報提供を呼びかけるツイートがありました。このツイートの中で、ハッシュタグ#台風19号長野県被害 と画像や位置情報を付けるように、との記載があります。 

f:id:biscuit17:20191112214248j:plain

長野県防災からのツイート

 

さらに、10月13日5時50分にも、ほぼ同じ内容で、被害の情報提供を呼びかけるツイートがあり、そして同日8時13分には、救助が必要な人は写真や位置がわかる情報をツイートしてください、との内容でツイート(下記)がありました。

f:id:biscuit17:20191112215150j:plain

 こうした長野県防災のツイッターでの呼びかけに呼応して、救助要請等のツイートがあり、それらが50件の救助に役立ったとのことです。

 

2019年12月1日にFUKKO STUDY と題するイベントが開催され、その中で実際に長野県防災のツイッターを運用している人も登壇し、プレゼンを聴くことができました。そのポイントを以下に整理します。

  • もともと #台風19号長野県被害 のハッシュタグで被害等の情報を収集することはルール化していたが、救助要請のツイートが多くなり、救助要請にツイート情報を活用
  • 救助要請の投稿者は、本人がツイート、親戚・知人等がツイートで概ね半々(イメージ)
  • ツイートの理由は、119番につながらない、つながって救助要請したけど追加(念の為)など
  • ちなみに、長野県の外で119番に通報すると、電話した地域の消防につながり、そこから長野県の消防に電話が転送されるが、つながらないか、消防は手一杯な状況と想定

 

  • 救助要請のツイートに対しては、まず長野県防災において、リプライなどで状況を確認し、情報を整理し、関係機関と情報共有。その方法は2つ
  1. 関係機関が集結する災害対策本部において情報共有
  2. 情報共有システムに情報入力

 

  • 現行、正式にツイートを救助につなげるスキームは無い
  • 個人情報の観点ではDMが望ましいかもしれないが、DMには課題あり
  • 救助後に、投稿者に救助要請のツイートの削除をお願いした。結果として、救助されたかを容易に確認できて、これでオッケー

 

  • 励ましのリプライ「絶対に助ける!」について
  • 一般的に行政では、大問題になる発言。助けられなかったらウソになる。責任が問われる。
  • しかし当時の現場では、要救助者に希望を持ってもらうことが何よりも大事
  • 結果として、炎上など問題には一切なってない

 

  • ツイッターの救助要請は、現状、使えない
  • 119番、110番等に加えて、救助要請をツイートすることで、まだ救助されていない要救助者の確認に使える
  • 救助のバックアップツールとしての価値が高い

 

  • 自治体公式ツイッターの位置づけについて
  • 既存広報ツールを凌駕
  • 住民と行政が新たな関係を構築するツール

  

以上が、FUKKO DESIGN での中の人のプレゼンのポイントです。

これらを踏まえて、災害時のツイッター活用することについて、考察します。

 

① つながりやすい

 一般に、災害時には電話はつながりにくくなります。今回の台風19号の際にも119番への通報がつながりにくかったと言われています。一方、パケット通信を利用するツイッターは、電話に比べて圧倒的につながりやすいです。

 災害時に、住民から情報提供を求めたり、住民や親戚が救助要請する際に、つながりやすい点で、ツイッターのメリットは大きいと言えます。

 

 

② 膨大な件数に対応可能

 119番への電話は、電話回線数、応対スタッフの人数などから、同時に対応できる件数には限界があります。一方、ツイッターへの投稿は、コンピュータ内の情報処理であり、サーバ処理能力も世界最強クラスと言われていることから、同時に膨大な件数に対応可能です。

 災害時に、住民からの情報を集約する際に、同時に膨大な件数を受信可能である点で、ツイッター活用のメリットは大きいと言えます。

 

  

③ 写真や位置情報で的確な状況把握

 ツイッターは投稿の際に、写真やジオタグと呼ばれる位置情報(衛星測位に基づく緯度経度の情報)を付与できる機能があります。

 写真があればリアルに状況を把握するのに役立ちます。また、ジオタグがあればピンポイントで場所の特定が可能です。ちずツイなどのサイトを使えば、自動的に地図上に展開・表示できて便利です。なおジオタグが付与されなくても、投稿文に番地名等を記載することで、位置の特定は可能となります。

 このように、写真と位置情報を活用することで、的確に状況を把握できる点で、ツイッター活用のメリットは大きいと言えます。

f:id:biscuit17:20180311150349j:plain

ちずツイの表示例

 

 

システム開発・維持のコストゼロ

 ツイッターを活用するってことは、日常的に使っているスマホやパソコンと、無料のツイッターサービスを使うだけなので、特殊なシステム開発やサーバ維持などに要するコストはゼロです。

 

 

⑤ 日常利用のシステムを災害時にも活用

 多くの災害事例を踏まえた定説として「災害時に災害専用システムは使われない。日常使っているシステムを活用するべき。」と言われています。

 この事例は上述の定説の通りに、日常的に大勢の人が使っているツイッターを災害時に活用するものであることから、システムのトラブルなく、使い方がわからない等の問題もなく、多くの情報が寄せられたものと思います。

 

 

ハッシュタグ命名

 今回使われたハッシュタグ #台風19号長野県被害 は、今回の台風19号限定のものであり、次の災害では、当然、違うハッシュタグになるものと考えられます。災害のたびにハッシュタグを変えることについては、混乱、間違いにならないか心配されます。

 また、被害状況のツイート、救助要請のツイート、など目的別にハッシュタグを変えるのも良くないと思います。投稿者側の混乱の原因や間違いになる可能性があります。投稿者の負担を減らし、間違いの可能性も減らすように、被災者=投稿者ファーストで考えるべきと思います。また、ひとつのツイートの中に、両方の情報が入っている可能性もあります。

 ひとつの提案として、災害時のハッシュタグは、#⚫⚫県災害 #⚫⚫市災害 と全国的に命名ルールを統一するのが良いと思います。当該地域の災害に関する情報は、全てこのタグで統一し、被災状況、救助要請などなんでオッケーとすべきと思います。

 被災状況を把握するために検索した人が、自分の近くで救助を求めている人の存在をツイートで認知し、共助につなげるようなことも想定されるので、災害時のハッシュタグは地域別にシンプルに統一すべきです。

 絶対にダメなのは、#災害 など全国共通のタグを使うことです。ノイズ情報が多く、場所の絞り込みも困難になるなど、デメリットが大きいです。また、#⚫⚫県被害 #⚫⚫県防災 #災害情報⚫⚫県 など地域別にバラバラの命名をすると、混乱の原因となるので良くないと思います。

 

 

⑦ 訓練の実施

  今回の長野県の事例は、事前告知なしの災害発生時のぶっつけ本番でした。結果として救助に役立ちましたが、できれば、防災訓練による事前練習を実施しておくべきと思います。

 和光市の事例では、防災訓練のメニューの一つとして、現地状況を#和光市災害ハッシュタグを付けてツイッターに投稿する訓練を実施したところ、その後日、ゲリラ豪雨の際、市役所からのアナウンスが無くとも、市民が自発的に市内の状況を写真付きでツイートし、状況把握に役立ったとのことです。

 

 

⑧ 様々な関係者の参加

 今回の事例では、長野県から住民に対して被害状況のツイッター投稿を呼びかけ、その中で救助要請に関する投稿があったことから、それらの情報を救助活動に活用したものです。

 被害状況を投稿するのは、住民だけでなく、消防団水防団、災害協定を締結している地元建設会社も、投稿に参加すべきと思います。できれば、行政による災害時の点検・パトロールの実施者も同じように、投稿すべきと思います。

 そうなれば、災害時、当該ハッシュタグで検索することにより、誰でも迅速に現地の情報を把握することが可能となり、住民の自主避難など的確な行動につながると思います。

 

 

 

⑨ 共助のきっかけとなる可能性

 今回の事例は、ニュース情報を見る範囲では、行政による救助、いわゆる公助に役立てた、とのことです。一方、大規模災害では、時として公的な救助が手一杯となり、住民相互に助け合う、いわゆる共助が重要と言われています。なお、ツイッター投稿は、非公開アカウントでなければ、誰でも投稿を見ることができます。

 このようなツイッターハッシュタグの災害情報共有が定着すれば、下記のような共助のきっかけとなる可能性も考えられます。

  1. 災害時に被災者が救助要請をツイート
  2. 公助が手一杯、交通マヒ等の理由ですぐに救助に行けない
  3. ツイートを見た近隣住民が現場に行き救助活動

 このように、災害時のツイッター活用は、共助=近隣の住民が助けるようなケースに役立つ可能性があると思います。

 救助を要請したいが、自分の居場所は絶対に他人に知られたくない、そういった人は、119番の電話をすればよいと思います。

 

 

⚫さいごに

 テレビが一般家庭に普及するようになって、大きな社会変革が生じました。スマホSNSの個人への普及は、その時以上に大きなインパクトを与える可能性があると思います。

 今後、全ての行政組織が積極的に取り組むべきと思います。

 ぜひ、このプレゼン資料も御覧ください。

www.slideshare.net

建設会社が災害時に現場からツイート

群馬県建設業協会では、災害時にパトロールや応急復旧を実施し、その現場の状況を逐一、ツイッターに投稿しています。そのことが読売新聞群馬テレビにも取り上げられました。 

www.yomiuri.co.jp

 

こうした建設会社が、災害時に現場状況をツイッターに投稿することについて考察します。

  

1.迅速・詳細な情報発信

 災害現場から、写真と位置情報(ジオタグ)をつけてツイートする。災害時の現場の詳細状況を、一刻も早く多くの人に伝える方法として、現時点でこれに勝る方法は存在しないと思います。

 建設会社が、行政に災害現場の状況を伝えた場合、行政内部での情報発信に向けた判断・手続きなどのタイムロスが発生します。行政の担当者が現場に行き、状況確認しようとすると、その移動時間がかかります。行政から情報を出す際、せっかくの写真が割愛されたり、軽微な被害は情報自体が出ないことも想定されます。近年の災害では行政機関が被災や混乱で的確に情報発信できない事例も多数あります。

 災害現場からツイートすることは、これらのデメリットを全て解消します。さらに、写真付きでリアルに現場状況が住民に伝われば、自主避難など的確な行動につながると思います。

 

2.多くの人に情報が届く

 災害情報がテレビのニュースに取り上げられれば、多くの人に情報が届きます。しかし、ニュースの内容はテレビ局の判断で決まります。記者発表しても、ニュースに取り上げられるかは、ケースバイケースです。

 一方、ツイッターによる情報発信は、迅速に多くの人に情報が届きます。ただし、特定のツイッターアカウント、特定のハッシュタグから、災害時に有益な情報が得られることを、住民に周知・浸透する事前の取り組みが重要となります。

 

3.知りたい場所の情報が得られる

 自分自身が被災地にいる場合、あるいは被災地に知り合いがいる場合を想定すると、知りたい情報は、特定の場所が、今どんな状況なのか?といったことになります。

 群馬県建設業協会の災害時ツイートには、もれなくジオタグ(緯度経度の位置情報)が付与されています。ちずツイなどのWEBサイトや、ジオタグを使えるアプリを活用することで、地図上で場所を確認しながら、どこが、どんな状況なのか、知ることが可能です。

 ツイッターでは、時として膨大なノイズツイートが発生し、その中から必要・重要な情報を抽出するのに難儀します。上述のちずツイなどを活用してジオタグで絞り込むと、自動的にノイズツイートが排除され、特定箇所周辺の情報が簡単に得られます。

 また、一部の行政機関では災害時のGISシステムの開発・活用などを進めていますが、迅速性や多くの人に情報を伝える点で、災害現場からジオタグつけてツイートする方法が優れていると思います。

f:id:biscuit17:20191019103310p:plain

ちずツイの表示例

 

 4.コストゼロ

 各行政機関、各地方公共団体は、独自に災害情報システムの整備に膨大な予算を投入していますが、建設会社が現場からツイッターで情報発信する方法は、基本的にコストゼロで実施できます。そして前述のように多大なメリットがあります。

 群馬県建設業協会では、現場情報を集約して投稿するための独自システムを開発していますが、ツイッターを活用することにより、開発コストは低くできているものと思います。

 

5.世界最強のシステム

 台風19号の上陸前後、一部の関係行政機関のホームページは、アクセス集中で見れない状況が発生しました。民間大手の災害情報を提供するサイト・アプリでも、アクセスしにくい状況となりました。ホームページを軽くするなど災害対応の措置を講じているケースもありますが、それで万全かどうかは不明です。

 一方、ツイッターのシステムは、高頻度アクセスに対して世界最強クラスと言われています。数年に1回実施される耐久試験「バルス!」で、そのことが実証されています。

 ただし、ツイートの中にホームページへのリンクを張っては意味がありません。ツイートの中で情報が完結する必要があります。

 

6.さいごに

 災害時には行政が情報を集約した上で、責任持って住民へ情報を出すべき、と従来からの発想にこだわる人もいます。一方、この10年間でスマホやSNSの普及が急速に進みました。そうした社会変革を踏まえ、柔軟な発想で考えるべきと思います。

 群馬県建設業協会の取り組み事例に基づき考察しましたが、災害現場の状況をツイートするのは、建設会社だけでなく、水防団消防団、行政職員、一般住民、誰でもイイと思います。ハッシュタグを共通化し、ジオタグをつけて皆がツイートする。これだけで、組織の枠を超えた災害時のリアルタイム情報共有が実現します。

地区防災計画はダメ

地区防災計画(ちくぼうさいけいかく)ってご存知でしょうか?

結論から言うと地区防災計画はダメだと思います。

 

地区防災計画とは、災害対策基本法に基づき、市町村内の一定の地区の居住者及び事業者(地区居住者等)が共同して行う当該地区における自発的な防災活動に関する計画。平成26年度より制度がスタートしてます。

簡単に言うと、『住んでいる地区の防災計画を住民が共同で定める』ってことです。

 

確かに、近年は災害が頻発・激甚化しています。また大規模災害時には住民相互に助け合う共助が重要です。しかし、住民が地区の防災計画を自発的に作る(自発的に作らせる)ってのは全般的には順調に進んでいない

 

内閣府「地区防災計画ガイドライン」を読むと、集会所などに住民を集めて(自発的に集まって)、住民間で何度か議論し、専門家のアドバイスを受け、町歩きなどした上で地区防災計画をつくるイメージです。しかし今の時代、そう簡単には住民は集まりません。内閣府のライブラリで既存の地区防災計画が公開されていますが、それらを見渡して、これでホントに機能するのか、大いに疑問です。数多く策定されれば、それでイイってものではありません。地域によっては、住民間で災害時の対応について熱心な議論が行われているケースもあるとのことですが、全般的には順調に進んでいないと思います。(公開された情報に基づく個人の感想です。)

 

市町村に対しては、国(内閣府)や都道府県から、地区防災計画制度を住民に広く周知・啓発するように、と伝達されていると思います。しかし、市町村の現場職員の本音は「住民に防災計画を作らせるなんて無理!ってのが大多数だと思います。内閣府の指示だろうが、法律に記載されていようが、無理なものは無理!と内心思っているものの、上司や上位組織(内閣府)に真っ向から反論すると、出世に響いたり面倒なことになるので、空気を読んで、表立って反論せず、淡々と事務作業を進めているだけ。 

 

住民も説明会で「皆さんで地区の防災計画を作ってください。」とか言われても、

災害時の責任を住民へ押しつけるんか!

集会所に何度も集まるなんて、面倒でやってられんわ!そんな時間ないし!

と思う人が多いと思います。実際に現場からの声があります。

 

共助のためには、地域コミュニティが重要。近年は住民間のつながりが希薄になっているので、地区防災計画づくりを通じて、地域コミュニティを活性化させよう、といった狙いもありますが、そもそも昭和の時代の地域コミュニティを、そのまま令和に復活・活性化させようとするのは無理。スマホを捨てて、インターネットが無かった頃に戻ろう、と言っているようなもの。これからの社会を担う若者の大多数はついてこないです。集まるのは、退職した高齢者や子供が巣立った家庭の専業主婦などが多いんじゃないかと想定されます。

 

災害は地区内で完結するものではなく、状況に応じて隣接地区に行って共助することも考えられます。また、通勤・通学している人は、職場や学校、移動の途上で被災する可能性もあります。

 

例えるなら、地区防災計画制度は裸の王様。現時点で「王様は裸だ!」と大きな声で言われていないだけ。

 

あるいは、1940年代に、現場の実情を無視して作戦を強行した某国の指令本部と似ていると思います。

 

地域コミュニティをベースにした共助が、阪神淡路大震災など過去の災害時に役立った、といった経験に基づき、これがあるべき姿だ!と考え、その後の技術革新・社会変革を一切踏まえずに、過去の再現を盲目的に目指すのは愚策

 

スマホの普及などの社会変革を踏まえ、共助を含む災害対応をIT活用で効率的に進める具体的な方策の検討を進めるべき、と思います。

 

より具体的には、SNSの利用者増を踏まえ、

共助に役立つネットコミュニティの醸成

を目指すべきです。乳幼児や重病人などの一部少数のスマホを使えない人に対しては別途救済措置を講ずれば済む話です。

  

先日の台風15号で、千葉県の房総半島では、長期の停電かつ有線・無線のインターネット通信も使えなくなりました。そうした最悪の事態を想定することも重要です。しかし、災害時に電気とインターネットが使えるなら、それを積極的に活用すべきです。電気とインターネットが使える状況なのに、それを一切使わない防災計画もナンセンスです。

ツイッター活用の防災訓練 について

和光市などにおけるツイッター活用の防災訓練について説明します。

 

ツイッター活用の防災訓練とは、

 

 実際の災害時、多くの市民が訓練通りに投稿することで、迅速に状況を把握する情報源になります。実際に和光市内でゲリラ豪雨の時に、市内の冠水状況等がツイッターに投稿された事例もあります。

 

 こうした提案に対して「大部分が匿名のツイッター情報は、そもそも信用できない!」とのステレオタイプの意見が根強くあります。確かに熊本地震では「ライオン逃げた!」とデマが投稿されるなど、災害時にウソ・デマが投稿されるケースがあります。

 しかし、この意見は「道路交通=車は、交通事故の危険性があるから使わない。」と考えるのと同じです。一部のネガティブな事実に基づき、全体を否定する考えです。木を見て森を見ず、と同じです。

 

 車は、事故を起こさないように注意して運転すれば、事故に遭遇する確率は小さく便利な乗り物です。しかし、それでも事故になる可能性はあります。

 ツイッターの情報も、信憑性を注意して活用すれば、概ね大丈夫です。しかし、それでも巧妙なデマ情報(フェイクニュース)にひっかかる可能性はあります。

 ちなみに、これまで和光市など複数の自治体で実施したツイッター防災訓練の事例では、的確な投稿がほとんどです。一部に少数のイタズラ投稿が見られるケースがありますが、無視すれば済む程度です。

 

 

ここから話題を災害時の避難に変えます。

  市民は、行政発表の避難情報を待って、これに従って行動すればよい。市民が情報発信するのは不要だ!と考える人も想定されます。しかし、実態として市町村からの避難情報が後手後手になるケースもあります。市町村の庁舎被災などで沈黙するケースもあります。こうした実態を踏まえると、市町村からの情報を待つだけではなく、市民自身が自律的に行動することが求められます。共助は、市民自身が、行政からの指示を待たずに自律的に行う救助活動です。

 

 平成になって以降、阪神淡路大震災東日本大震災をはじめとする大規模地震や、異常気象による風水害・土砂災害が多発する時代になっています。一方、スマホやSNSなどIT技術の進歩・普及も急速に進んでいます。

 こうした社会の変革を踏まえ、災害時には、市民相互に情報共有し的確に行動する。これが令和時代の望ましい災害対応だと思います。

 

 スマホ持ってない人、ツイッター使えない人はどうすんねん!と言う人。それは周囲でスマホを持っている人が助ければ済む話です。とにかく、まずはやってみる、そこからスタートすべきだと思います。

 

詳細はこちらのスライドをご覧ください。

https://www.slideshare.net/maod1/2019726

 

 

エスカレータで片側を歩く是非

まずは、エスカレータではなく、道路、それも田舎の上下2車線の道路で、農業用のトラクタが低速で走っている状況を思い浮かべてください。見通しが良くて、対向車は来ません。そこで右側車線に出て、一時的な逆走状態でトラクタを追い抜いて先に行く。これを禁止にするのはナンセンスだと思いませんか?
安全な状況で、遅い車を追い抜く。なんら問題ないと思います。

しかし、見通しが悪い場合、無理に追い越そうとすると、対向車と正面衝突なんてことになりかねません。なので、見通しが悪い状況では、追い越しはしない。これはドライバーの判断として当然のこと。

エスカレータでも同じ。
片側が空いている場合、先を急いでいるなら、立っている人と接触しないよう注意しながら先に行く。
手をつないでいる親子や、体の不自由な方など、理由はとにかくブロックされている場合。その時は、無理に先に行くのは諦める。

感情的な極論は、良くないと思います。
例えば、無理な追い越しをしてきた車と正面衝突の事故となり、大事な人を失った。だから全ての道路を追い越し禁止にすべきって考えはどうかなと思います。反対です。

皆が安全に配慮して、他の人を慮って(おもんぱかって)行動する。それでイイんじゃないでしょうか。
エスカレータで立っている人は、先に行きたい人がいるかも知れない、そう慮って、なるべく片側を空けておく。

エスカレータで先を急いでいる時にブロック状態になっていたら、安全上の配慮から無理に先に行かない。何か事情があるのかと慮る。

そうした考えの人、行動する人が多くなればイイなと思います。

令和時代の共助は、ネットコミュニティで

阪神淡路大震災では、倒壊家屋の中の被災者の多くは、公的な救助ではなく、近隣住民から救出されました。これをきっかけに、災害時の救助には自助、共助、公助の3種類があり、大規模災害では共助が重要と言われるようになりました。

 

的確に共助が行われるためには、地域コミュニティ活動=地域のお祭りなどのイベントを通じて、隣近所が顔見知りになり、そうした隣人とのつながりが重要と言われきました。内閣府が出している防災関連のパンフレットでも、地域コミュニティによる共助...と随所に書かれています。

http://www.bousai.go.jp/kyoiku/chikubousai/pdf/180604.pdf

http://www.bousai.go.jp/kyoiku/chikubousai/pdf/pamphlet.pdf

 

しかし、地域コミュニティ活動の衰退が、都市部を中心に全国的に進行しています。都市部の20代から50代の通勤サラリーマン世帯に、平日夜や休日に公民館に集まってください、と呼びかけても、実態として、ほとんど集まりません。

 

「昔のような地域コミュニティ活動を活発にしよう」
「住民主体で地区の防災計画を策定しよう」

みんなでつくる地区防災計画 : 防災情報のページ - 内閣府

このように内閣府から自治体に指示を出しても、無理。法律に書いてあっても無理なものは無理。一部でなんとか対応するケースがあっても、全国的に広く浸透するのは、ほぼ不可能。

 

時代は「昭和」から「平成」を経て「令和」と移り変わりました。令和の今は若者中心にスマホ+SNSで四六時中、情報交換を行っている時代です。昭和の時代は情報を得るには、ラジオ、テレビ、新聞、電話、クチコミしかなかった状況とは大違いです。

こうした社会変化を踏まえ、令和の時代は、共助に役立つネットコミュニティを醸成するべきと思います。

 

具体的には、ツイッターハッシュタグ#〇〇市災害 を通じて、災害時の地域内の状況について、住民相互にスマホで情報共有し、この情報に基づき、要救助者がいれば共助を行う。令和の時代はこれを目指すべきと思います。

詳しくは、こちらのスライドをご覧ください。

www.slideshare.net