リアルな災害情報をリアルタイムに伝えるには?
災害時、避難情報が出ても逃げない住民が、少なからずいます。
こうした実態を受けて、国土交通省では「住民自らの行動に結びつく水害・土砂災害ハザード・リスク情報共有プロジェクト」という取り組みを平成30年から進めており、プロジェクトレポート(中間報告書)も出ています。
レポート記載内容のポイントを抜粋します。
平成30年7月豪雨にみる住民への情報共有上の課題
- 住民は身に危険が迫るまで避難を決断していない
- 各種の警告情報が流れる中、どのタイミングで逃げればよいのかわからない
- 隣の人や消防団に避難をすすめられるまで避難していない
課題対応の方向性
- 災害情報のローカライズの促進と個人カスタマイズ化の実現
- 画像情報の活用や専門家からの情報発信など切迫感とリアリティの追求
そして、具体的なプロジェクト(実施項目)のひとつに、以下のものがあります。
災害リアリティー伝達プロジェクト
- 国土交通省職員等普段現場で災害対応に当たっている専門家がリアルタイムの状況をテレビやラジオ等のメディアで解説し、状況の切迫性を直接住民に伝える。
例えば、河川の水位が上昇して堤防が危険な状況にある、と言った状況を近隣住民に迅速に伝える、と言った状況を想定すると、私なら、下記のように提唱します。
理由を説明します。
まずテレビやラジオ等のメディアを通じて住民に伝える、といった点について、テレビ等は大勢の人に同一情報を伝えることに秀でていますが、その反面、個人にカスタマイズしたローカルな情報を伝えることは不得手です。避難等行動するためには個人向けの情報が必要です。
さらにテレビを通じて情報を伝えるには、テレビ局との調整が必要となり、また各現場の状況を対策本部に情報集約し、本部がメディア説明向けに情報整理して...なんてことも時間の無駄。
一方、ツイッターは投稿した瞬間に誰でも情報にアクセス可能となります。一刻も早く=リアルタイムに現場のリアルを広く伝える方法として、現場からツイッターに投稿する方法がイチバンです。ラインやフェイスブック等の主要なSNSと比較しても、こうした目的で利用するにはツイッターが最適です。
ハッシュタグ(例:#〇〇市災害)が広く住民に周知されていれば、住民はハッシュタグで検索し、自分の周囲の状況を把握し、自らの判断で行動することが可能となります。平時に実施する防災訓練も、このようなローカルな情報共有に関する訓練を実施すべきと思います。実際に埼玉県和光市では、#和光市災害 のハッシュタグを活用し、消防団も参加して情報共有の訓練を実施しています。過去の訓練投稿は、#和光市災害 で検索することにより、誰でも閲覧可能です。
ちなみに災害情報を共有するハッシュタグは、地域別にすべきです。なぜなら全国共通のハッシュタグ(例:#災害情報)では、情報過多となり必要な情報が埋没し、使い物になりません。住民にとって必要な災害情報は、周辺地域のローカルな情報であり、従ってローカルな災害情報を共有するハッシュタグは地域別にすべきです。
別の事例として、群馬県建設業協会では、災害時の現地状況や降雪時の路面状況を逐一ツイッターに投稿しています。このアカウントをさかのぼって閲覧すると、過去の災害時の協会の活動状況を把握できます。
よくある指摘として
「ツイッターには、ウソ・デマが混入する可能性があり、情報の信頼性が無い。」
「ハッシュタグを付与してウソ・デマが投稿されたらどうするのか?」
といったものがありますが、心配ご無用、十分に対処可能です。
まず一目で簡単に見抜けるウソ・デマは無視すれば済みます。目障りならアカウントをミュート・ブロックすれば、表示されなくなります。
簡単に見抜けない巧妙なフェイク情報が投稿されたとしても、必ずツイッター民の誰かがフェイクだと断定、あるいはフェイクの可能性ありと特定します。ツイッター民の情報分析能力は半端なく高いです。もしくは、災害時のツイッター情報を分析する会社・研究者がフェイク情報を特定するケースもあると思います。そして、その誰かが
「この情報はフェイクの可能性あり」
とハッシュタグを付与して投稿すれば、住民に対する注意喚起となり、フェイク情報による混乱は収拾されると思います。
「スマホを持っていない、ツイッター使えない高齢者・乳幼児等は、どないすんねん。」
といった情報弱者への対応については、まずはスマホを使いこなせる大多数の人に、リアルな災害情報をリアルタイムに伝える。そして、その次のステップとして、少数の情報弱者へどう対処するかを検討すべきと思います。
これまで述べた内容については、下記リンク先のスライドに説明資料をまとめていますので、ご覧ください。